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音楽の力、ほどく・ほどける

 昨日は、毎月やっている「ライブスペース勢の!」の第44回でした。

 「勢の!」は、毎回、毎回、心に沁みる音・音楽にダイレクトに触れることが、いともやすやすと起こるコンサートですが、昨日は久々に高揚し、その余韻で一夜明けた今も高ぶっています。

 昨日はいろいろなスペシャルがありました。
 ますは、東京から長津結一郎さん、彼は東京芸大に入学した年に僕を訪ねてくれ、今は芸大の博士になった人ですが、その長津さんを久々に地元に迎え、彼がライブを喜んだことも、僕にとって誇らしく嬉しいことでした。
 また、昨日のステージでの出演者5組(長津さんも含めて)のパフォーマンスが、それぞれに力のこもったものであり、そのパワーがストレートにお客様に伝わる実感を持てたことにも、ライブの仕掛け人としては「我が意を得た」のでした。

 ですが、何にもまして僕を揺さぶったのは、僕もメンバーの一員として必死に演奏した「エール」のパフォーマンスが起こした渦のすさまじさ、であったことを確信しています。

 これまでたびたび、様々に紹介してきたグループ「エール」というのは、尾鷲の若者5人の障がいのある人たちのバンドです。この人たちは、僕の音楽療法のグループセッションとしてスタートし、ギターを中心とした合奏に取り組んでからは「バンド」という意識を持って、活動を重ねてきたという経緯があります。そこへ3年ほど前から安田陽子さんが加わって、一挙に演奏の幅が拡がり、急な階段を駆け上がるようにかっこよくなっていったのでした。ほのぼのとか、心温まるとか、じゃなくて、かっこいいのです。


 昨日は、「ヘビーローテーション」「涙そうそう」「サバの女王」の3曲の予定でステージに臨み、アンコールに応えて「インザムード」もやってきました。
 最初の一音から、と言いたいところですが、その前からですね、みんながそれぞれにステージサイドに出てきただけで、何をどうこうしなくても、その場に居合わせる人たちの笑顔を誘うわけです。
 そして、わりと要領よく、自分たちのパフォーマンスに入ります。そうなんです。エールはもう何度も何度もいろんなシチュエーションでライブを経験しているのです。
 曲を支えるのは、確かに手練れのピアニストである安田さんで、僕も必死にギターを弾いていきます。ですが、それは指揮をするとか、枠組みを作るとか、みんなをまとめるとかいうのとは全然違うんです。確かにピアノとギターによるメロディやハーモニーそれに基本的なリズムは、ある種メンバー同士のきずなの一つの現れだとは思うけど、一人一人は、まるで自由、悪く言えば自分勝手と言ってもいいくらいなんです。ですが、音楽はバシッ、バシッと決まっていく。
 もし僕や安田さんが事細かに教えていけば、彼らはその通りにやることもできるでしょう。でもそれはつまらない音楽にしかならない。

 役割として、安田さんのピアノや僕のギターは、バンド全体のよりどころではある。で、彼らもそれは気にしつつ、しかし自由に動き、奏で、まずは僕の心をほどき(多分安田さんの心も)、自在な「エール」の音楽を形成していくのです。
 僕はこのバンドのプロデューサー、そしてこのステージのディレクター、という意識も持っていて、彼らの立ち位置、マイクの扱いなどにも気を配る、ということをしているつもりなんですけど、そんな僕の次元の低い「配慮」なんか全然いらないことを思い知らされました。僕はひたすらギターをかき鳴らして、彼らと一緒になって音楽を創っていったと実感しています。経験が自信となり、メンバーひとりひとりが、自分のパフォーマンスがどこに向かって力を出し切るのか、体得しているのです。

 そして、「エール」の演奏はお客様の心もほどいて行ったに違いないのです。

 昨日のライブでは、実は、昨日は僕と普段個人セッションをしている幼稚園のお子さんも観客の一人として参加していました。いずれこの子にもステージに立つ経験をしてもらいたいので、お誘いしていたのです。たくさんのおとなが陣取っているホールに入っていくのも、スピーカーを通して拡がる様々な楽器や声はキャパシティを超えた大音響になって、不安をあおったのかも知れません。この子はお父さんにしがみついて、耳をふさぎ、部屋に入ろうとはしませんでした。ドア越しに誘いましたが、僕はそれ以上の無理はしませんでした。

 その後、自分の出演もありましたからこの子のことをすっかり忘れて、いつ入室したのかは分かりませんが、あとで、「エール」の演奏をノリノリで全身で楽しむ姿があったということを聞かされました。
 この子にとってはコンサートの観客になるには、幾重にも壁があったのでしょうけれど、「エール」にこの子の気持ちを解きほどく力があり、その子にもほどける気持ちのままに楽しむ力があったのだと思います。

 様々な音楽を楽しみ、たくさんの感動的なシーンを体験し、その勢いのままに教職を辞し「音楽療法士」に転身した僕が、ご褒美をもらったような時間でした。
  

at 05:38, まんどろ, ライブと音楽

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やすやす, 2013/06/18 10:43 AM

 今回のステージは最高でした。今やっと興奮から落ち着いた所です。 
エールのメンバーは、音楽を一緒にするだけで心が解きほぐされます。その楽しさは言葉では表せられません。なぜ、素晴らしいかなんて多分、理由なんてないんですね。
今は虚脱感があって、30日のライブまで立て直せるかちょっと心配ですが、みんなに会うとまたまた元気になれるんですね。こればっかりはホンマ不思議です。本当にありがとうございました。お客様に感謝したいです。無事できてよかったよ〜。

まんどろ, 2013/06/18 11:12 AM

 同感ですねえ・・・・。エールは見るとか聴くではなく、体験ですよねえ・・・。その体験は強烈で、あとをひいて、抜け殻みたいな感じもなってしまう。でも、彼の前に出れば、また活力が取り戻せる、そんな感じでしょうか・・・。何回体験しても、慣れっこにならないから、感動があるんだとも思います。
 またよろしく。










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