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「音遊びの会」NHKのドキュメント見ました

 年も押し詰まった12月30日のことでした。NHKで「音遊びの会」のドキュメントが放映され、見せてもらいました。
 この「音遊びの会」には親しい友人がメンバーだったり、深い関わりをしていたりしてますので、すでに何回かNHKの番組があったことも知っていたのですが、これまで見損ねておりました。

 障がいのある人たちの即興音楽のライブシーン、とでもいえばよいのでしょうか、それをプロミュージシャンたちやダンサー、音楽療法家などが、ど真剣に関わり、生まれてくるもの、それを紡いでいくプロセスが描かれておりました。
 映像からも、なるほどメンバーの個性的なパフォーマンスにも惹かれるわけですけど、印象的なのはこのグループを立ち上げた中心人物の沼田里衣さんや今回のドキュメントでは主役の大友良英さんの文字通りのど真剣な表情でした。人と人が普段自分でも気づかないような深い部分で渡り合おうとすれば、まあああいう姿は当然でてくるのでしょうねえ・・・。さらさらっと音楽する技術はもちろんお持ちでしょうし、それがいい場面もきっとある。ですが、容易なことでは調整の難しい個々のメンバーのスピリットを活かしたいとなれば、手練れのミュージシャンであっても、どこかの引き出しの一つを開けて引っ張り出せばよい、というようなことではないのでしょう。

 大友さんは、音楽にしても日常の生活にしても、通常の枠組みでOKな間柄だと気づかない、枠にはまれない人との出会いについて、関わり始めた頃の「めんどくさい」という気持ちと、じゃあどんなことをすれば相渡り合えるようになるのか試行錯誤することから生まれる豊かさを何度も強調してしゃべっておられたように思います。
 そういうことが、ライブ、まさに生の生きたパフォーマンスを、知らない土地の知らない人の前でやっていくことで、自分が見えてくる、というようなニュアンスも強調していました。イギリスに行き、また国内でもあちこちでライブをやるわけですね。それはまさにミュージシャンの暮らしです。ですが、メンバーは「音遊びの会」以外では障がいのある人のための場所で働いていて、音楽が仕事というわけではない。

 また、ナレーションの中に、音楽療法家が関わっていることと、「治療」を目的にしていないというくだりがありました。
 「治療」の意味合いにもよるわけですが、実にまっとうなことでしょう。僕は自分の「音楽療法士」の職業的な肩書が長年しっくりこず、あんまりそういう名乗り方をしたくありませんでした。「治療」なんてとてもとても、と敷居の高さも感じてましたし、それでも、僕の目の前で起こっていることは間違いなく素晴らしい、という実感も持ってやってきました。
 ではありますが、ここへきて、ずいぶん強気に地域での人々の暮らしの中で、音楽療法士が果たす役割の大きさを自覚するようになりました。まあ「治療」の二文字に縛られないことを、遅まきながら体得したのだと思います。

 大友さんのまとめのような話に、「音遊びの会」はもう十分に素晴らしい活動をした。今後は50年くらいのスパンで何か新しい音楽の実践が生まれてきて、その礎のようなことになっているんじゃないか、みたいなこともおっしゃいました。
 本当にそうかも知れませんけど、海外公演も行い、NHKで何度もドキュメントが放映される「音遊びの会」はそれ自体、障がいのある人の即興音楽という山の一つの頂点のようにも感じます。僕がそういうことに興味関心を抱いてみてきたこの20年間程の経験でも、思いつきのたどたどしい、あるいは意欲を持った半ば実験的な、また日々の生活の地道な活動の一環として、障がいのある人の即興活動は、様々に取り組まれてきたのを知っています。で、あのテレビの映像から見るパフォーマンスのいくつかは、僕の仲間の姿ともオーバーラップするものなのです。大友さんが楽しそうに語ったステージに上がりながら眠ってしまった仲間と言えば、僕にも経験のあることなのでした。

 で、僕も音楽療法士なので、すごいなあ、と「音遊びの会」のプロデュース力の確かさに感嘆し、それと同時に一人一人が自分を表現するそのすごさを支えるためのしくみについても考えました。
 キーワードは、3つ。時間・空間・道具、この制約と可能性のはざまで、自由といわば段取りのせめぎ合い、見えないことへのこわさを支える安心の基盤・・・。
 
 大変刺激になりました。僕の音楽もちょっと変わるかも知れません。はたから見ては全然わからない微細な変化かも知れないし、あっと驚く変りようかも、・・・。全然変わる必要もなく、まあどっちでもいいんです。

 皆さんどうぞよいお年を。      2013年の大晦日の昼間。

at 13:08, まんどろ, -

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